ジョジョ7部の「できるわけがない」の真の意味を解説する。

“STEEL BALL RUN 11巻 #43より引用”

できるわけがないとは?

 

「まず最初に言っておく、ジョニィ。おまえはこれから『できるわけがない』というセリフを……4回だけ言っていい」

 

謎の敵がジョニィ達を包囲する。しかしながらジャイロ達の手元には武器である鉄球が無ければ馬も無い。そんな絶体絶命の状況を打開すべく、ジャイロは自らが持ちうる奥義(=回転の技術にまつわる秘密)を相棒であるジョニィへ伝授しようとする。

そこでジャイロが発した「スティール・ボール・ラン」11巻に登場する有名な台詞だ。

 

できるわけがないの意味は「逆境のときに潜在能力が引き出されてなんとかなった」ではない

10年ぶりにSBRを読み返した今、またその疑念がぼくの心の中に泉のごとく湧いてきた。

10年前は「『できるわけがない』の言葉の意味がわからない。」というところで思考が停止していたがもう10年前のぼくとは違う。手はじめにグーグルを開いてぼくは「できるわけがない ジョジョ 意味」でみんながどう解釈しているかを調べてみた。

そうすると2つほどサイトがあったんだ。逆にいうと2つだけしか「できるわけがない」の意味を考察しているサイトはなかった。

そこにはこう書いていた。

「追い詰められて初めて〜真実にたどり着いた」、「もう限界だと思う逆境ではじめてさらなる進化ができる〜」

「できるわけがない」という台詞を言わせた全ての目的は「『できるわけがない』」という台詞を4回口にする程までに追い詰められて初めて、(バックルなど)模造品の長方形では黄金の回転へ辿り着けない事実を気づかせる」事にあった。
〜「ニコニコ大百科」より引用〜

・何度もトライして、何度も「できない」と思ってこそさらなる進化が待っている。
・能力を伸ばしていく時人は必ず壁にぶつかる。「もう限界だ」と思う瞬間はあるはずだ。しかし、そんな逆境は自分の限界を引き上げ、成長するチャンスでもある。逆境を乗り越えるときにこそ、人の潜在能力は引き出される。
〜「ジョジョの戦略 最後に必ず勝利する方法」より引用〜

 

…なるほど、一見するともっともらしい回答だ。でも断言しよう。これは違う。

 

これだと結局「逆境のときに潜在能力が引き出されてなんとかなった」というこの状況の説明にしかなっていないんだ。できるわけがないの意味の説明にはなっていない。

「『できるわけがない』と言ったことで危機を乗り切った」という状況の説明でしかないんだ。

 

二人の旅路では追い詰められた場面は何度もあったし、もし「できるわけがない」の意味するところが本当にそうだったとしたならば、わざわざジャイロが「おまえはこれから『できるわけがない』というセリフを4回言っていい」なんてもったいぶらなくていいはずだ。

「できるわけがない」の意味の説明にはなっていない。これじゃあピンとこないんだ。

 

ジャイロの伝えたかったことはこういうことじゃないんだ。

 

できるわけがないの本当の意味は2つ。自己への諦め。そして自分を消すこと。

できるわけがないの本当の意味は2つある。

 

「自己への諦め」と「自分を消す」という意味での「できるわけがない」なんだ。

 

じゃあいったい「自己への諦め」と「自分を消す」っていうのはどういうことなのかそれぞれ解説しよう。

 

自分を消すことで意識を自然に向けて、黄金長方形の本物は自然の中にもともとあることにジャイロは気づいて欲しかった

池田晶子の「暮らしの哲学」から言葉を借りよう。

多くの人は、とくに現代人は、自分を自分だと思い込んで、その自分を主張し続けてその人生を終えますが、そうではなくて、本来は、どこまで自分というものを消してゆけるかが人生なのだ。自分を消して、自分がいなくなれば、当然それは自然とか宇宙の側へと開けてゆくでしょう。
〜池田晶子「暮らしの哲学」より引用〜

どういうことかというと自分を消してゆけば自然とか宇宙の側へ開けていくんだ。

“STEEL BALL RUN 11巻 #43より引用”

確かにこのシーンを見るとジョニィの意識は自然へと向いていることがわかる。」できるわけがない」と言って「自分を消す」ことで自然の側へと意識を向けるようにしたんだ。

今回は哲学的な話を掘り下げるつもりはないから細かくは説明しないけど「自分を消す」っていうのは自我を消すことなんだ。

でも「自分を消す」って言ったところで自分が消えることはないからね。「自分を消す」と思っている自分がまたそこにはいるんだから。「自分」が消えるということは絶対にないんだ。

自分を消して、自分がいなくなれば、考えることっていうのは当然それは自然とか宇宙の側へ向かうということを言っているんだ。

 

ジャイロは「できるわけがない」とジョニィに言わせることによって「自分をけし」て黄金長方形の本物は自然の中にあることを伝えたかったんだ。

 

自分を諦める—自分の中の理想と現実のギャップを埋めててようやく本当の自分が見えてくることを伝えたかった。

ここでも為末 大「諦める力」から言葉を借りよう。

「諦める」という言葉の語源は、「明らめる」だという。仏教では、真理や道理を明らかにしてよく見きわめるという意味で使われ、むしろポジティブなイメージを持つ言葉だという。
〜為末 大「諦める力」より引用〜

諦めるというのは決して君の思っているダメだと思ってやめてしまう。というようなことではないんだ。真理や道理を明らかにしてよく見きわめるということなんだ。

このジョニィの4回のできるわけがないを見てほしい。ジョニィが一つずつ自分のできないことを明らかにしていっていることがわかる。

1回目:黄金長方形の回転の力を自分が使えるわけがない

2回目:この状況ですぐにできるわけがない

3回目:こんな「力」じゃない。ぼくにできるわけがない

4回目:最初からバックルを使わせてくれていればいきなり回転の説明されたってすぐにできるわけがない

すべて“STEEL BALL RUN 11巻 #43より引用”

思い描いていた現実と、それに対して自分の思い通りにならない泥まみれの現実のはざまで人は苦悩する。まさにこのジョニィもそういう状況だ。この状況を打破できるすごい力を持つ理想の自分と自分の思い通りにならない泥まみれの自分。

しかしながら「できるわけがない」と言うごとにジョニィが理想と現実の自分のギャップを明らかにしてその差を埋めていっていることがわかるはずだ。

 

つまりは「できるわけがないと言うたびに、自分のできないことがなんなのかジョニィは少しずつ理解していっているんだ。そして自分に対しての正しい感覚が研ぎ澄まされていっている」ということなんだ。

 

だから、作中でもただ何も考えず「できるわけがない」と言ったジョニィに対して

STEEL BALL RUN 11巻 #43より引用”

と言ったのも説明がつくんだ。自分の正しい感覚を研ぎ澄ますことができていない「できるわけがない」はノーカウントなんだ。

 

理想と現実のギャップを埋めるということ。本来こうあるべきだという自分を諦めてようやく本当の自分が見えてきてここからがスタートなんだ。

4回できるわけがないと言ったジョニィは見事に答えにたどり着く

ともに“STEEL BALL RUN 11巻 #43より引用”

ドイツの詩人ゲーテは「個人が何事かに達するためには自分を諦めなければならない、しかし誰もこのことを理解しようとしない」と言った。

 

「できるわけがない」と言うことで自分を諦める—理想と現実のギャップを埋めて見えてきた初めての自分こそが黄金長方形を考えるスタートに立てるということを伝えたかったんだ。

 

できるわけがないの意味の総まとめ

  1. 「自分をけす」という意味。「自分を消す」とは自然に意識を向けること。ジャイロは「できるわけがない」とジョニィに言わせることによって黄金長方形の本物は自然の中にあることを自分で気づいて欲しかった。
  2. 「自己の諦め」。諦めるとは文字通りの諦めるではなく、明らかにするということ。「できるわけがない」と言うことで自分を諦める、自分に対しての正しい感覚が研ぎ澄ましていく—理想と現実のギャップを埋めて見えてきた初めての自分こそが黄金長方形を考えるスタートに立てるということをジャイロはジョニィに伝えたかった。

 

ジョジョ7部を読んでいない?であればぜひ読むんだ。

7部はレースが主軸でスピード感の溢れた物語になっているし、主人公もジョジョシリーズの中で一番人間臭くて共感できるところも。そしていろんな過去を背負ったそれぞれの登場人物がレースでぶつかり合うところもまたおもしろい。

賛否両論あるかもしれないけど、シリーズ屈指の名作であることは間違いないから。

※今日引用した参考文献

 

 

 

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